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Leo the footballの考える「日本サッカー2.0」。次世代のサッカーで求められる戦術的アップデート

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テレ東プラス

2019.8.13

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日本サッカー界がにわかに盛り上がっている。コパ・アメリカでの日本代表の奮闘は記憶に新しく、スペインの名門・レアル・マドリードへの久保健英選手の電撃移籍は、海を越えて世界でも注目の的となった。来年に控える東京五輪に向け、期待の熱は高まっている。

一見すると未来は明るいように思えるが、世界のサッカーの進化は日進月歩。日本代表も同じスピードでアップデートしなければ、めまぐるしく入れ替わる戦術のトレンドに取り残されてしまう。今回は、サッカーの分析家としてYouTubeで人気を集めるLeo the footballさんに、「日本サッカー2.0」に必要なヒントを聞いた。

前線からの守備と柴崎岳の使い方。日本代表の抱える課題とは?


──世界のサッカーは日々アップデートしながらしのぎを削っています。日本サッカーを「2.0」にするために、何が必要だと思いますか?

「正直なところ、今はまだ0.5だから1.0を目指そうぜ、という段階だと思います。ヨーロッパの最先端と比較すると、日本サッカーは発展途上で荒削りな部分が目立ちますよね」

──たとえば、どういった課題を抱えているのでしょうか。

「ひとつは戦術のディテールを詰めきれていないこと。現代サッカーは緻密な戦術の応酬になっていて、バルセロナやマンチェスター・シティなどは戦術がハマらないと見るや、10分くらいで修正します。日本でも大分トリニータの片野坂監督は修正スピードが早いですね。たとえば、左サイドのコンビネーションが悪いときに、左右のウイングバックを入れ替える。相手のビルドアップにフォーメーションを噛み合わせて封じ込めるなど。ただ、日本サッカー全体にこうした文化は根づいてなくて、日本代表でも監督の采配は強化するべきポイントだと思います」

──最近の試合を例に、采配の良い点・悪い点を教えてください。

「たとえば、6月の親善試合で森保ジャパンは3-4-3のシステムで、守備時には両ウイングを下げて5-4-1になる形を採用していました。相手は移動の疲れもあってか、味方FWが動いたスペースに次に入ってくる選手のタイミングが遅い。それに対し、日本は昌子源や冨安健洋といった能力の高い選手がCBで起用されているので、相手FWを追って空いたスペースへのカバーリングで常に先手を取れていましたね。森保監督はこうした撤退守備のオーソドックスを構築するのは得意で、サイドからの攻撃力の低いチームには手堅く守れます。これは4-4-2で守っているときも同様で、ボールの位置に対して全体をスライドさせるような守備は、ある程度は整備されています」

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──いわゆる引いて守る守備はできていると。

「一方で課題を残すのは前線からの守備。こちらが5-4-1で前からプレスに行こうとしても、味方の1トップに対して相手は4バックなので、数的優位を作られてパスを回されてしまいます。本来の3-4-3で守っても、前線が1枚足りませんよね。そこで解決策になるのが、味方の3トップがプレスをかけるのに連動して逆サイドのウイングバックも前に上がり、相手の4バックに対して4枚で対応すること。さらにボランチへのパスコースも切るような走り方をすれば、前線で奪ってカウンターという形に繋げやすくなります。でも、森保ジャパンはこの意識づけが曖昧で、3トップの左右がプレスをかけてもウイングバックが連動していないから、敵のサイドバックにボールを持たれてしまうシーンがありました。こうした動き方のディテールは、しっかりと落とし込まないといけません」

──こう来たらこうという約束事が、より細かく必要なんですね。

「森保監督は選手たちからも慕われていますし、モチベーターとして優秀な方なんだと思います。ただ、前線からの守備でどう奪って攻撃に繋げるかというデザインは得意じゃない。これはモウリーニョやベニテスといった、少し時代遅れになっている名将にも見られる現象なんですよ。ですが、現代サッカーでは攻撃の戦術も非常に論理立てて作られていますから、昔みたいに引いて守っているだけだと簡単に崩されてしまいます。こうした戦術のアップデートをできない監督が、たとえ一時代を築いた名将でも淘汰されていく。ヨーロッパの最先端では、凄まじいスピードでそういった競争が起きています」

──選手の起用についても、適材適所の使い方がありそうです。

「例えば、日本の両サイドバックを担う酒井宏樹選手や長友佑都選手は、クロスの精度が武器になっている選手ではないじゃないですか。でも、日本代表はずっとサイドバックを上がらせるシステムになっている。これも海外だとウイングの選手をワイドに張らせて、その内側にできたスペースをインサイドハーフ、日本でいうと柴崎岳のような選手を走らせて、サイドの深い位置を取りに行ったりするんですよ。そして、空いたインサイドハーフの位置には、守備能力の高いサイドバックをスライドさせる。柴崎選手は精度の高いキックを持っていますし、酒井選手は守備でカウンターの防波堤になれるタイプなので、この戦術は日本代表にドンピシャですよね。最先端のサッカーから戦術を盗んで、こうしたアップデートを行うことも必要だと思います」

──森保監督の采配を見ていると、あえて戦術を落とし込みすぎず、中長期的な視点で選手の自主性を育てているようにも見えます。

「自主性を育てるにしても、選手に局面を判断するための『基準』を与えるべきだと思います。たとえば、ここにいる3人で『一番楽しいと思うことをしよう』となったら、会話したい人、お酒を飲みたい人、トランプをしたい人では回答が異なるじゃないですか。サッカーでも同じで、ゴールを目指す最善の手段は人それぞれ。パスを繋ぐ人、ロングボールを選択する人、ドリブルで勝負する人と分かれるわけですよ。だったら『自分たちはパスを繋いでゴールを奪おう』というプレービジョンを決めた上で、その繋ぎ方や動き方のディテールを落とし込まないといけません。自主性や個人の判断を求めるのは、こうした基準を設定してからの話です。100人いたら100人でベストは違うので、まずはベターを決めて、そこからベストを目指さないと食い違ってしまいます」

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重要になる「ロジカル運営」と「戦術の言語化」


──ピッチ上での課題のほかに、ピッチ外での課題もあるのでしょうか。

「外から見た限りの話ですが、日本サッカー協会もディテールにこだわった運営をできたら良いですよね。たとえば、昨年のロシアW杯前もハリルホジッチ監督の電撃解任でかなりの批判を浴びていましたが、解任自体は勇気のある決断だったと思うんです。実際にハリルホジッチ監督の手腕を疑問視する声は、各所から上がっていました。問題は解任の理由が『コミュニケーションの問題』の一点張りだったことで、これにより協会の体制に不満を持つサポーターも出てきてしまったわけです。でも、もし解任の理由を論理的にしっかりと説明して、そこにひと匙のエモーショナルも加えられれば、国民も『苦しい状況だけどみんなで応援しよう』って前を向けたと思うんですよ」

──確かにW杯前の日本代表は「おっさんジャパン」とも呼ばれ、激しい批判に晒されていましたね。

「僕の目には、こうしたディテールをもう一歩詰めきれていないように見えるんです。人とボールの動くサッカーを標榜しながら、アフリカで活躍していたハリルホジッチを呼んできたり。S級ライセンスを持っているサッカー解説者の方が、フワフワとした解説をされていたり......。もっと一貫した人事を行なって、S級の指導項目にも最先端のサッカーを積極的に加えていくべきだと思ってしまいます。森保監督が三国志における劉備玄徳のようなモチベータータイプのリーダーなら、諸葛孔明のような参謀をつける。こうした組織全体の適材適所を整えることが、まずは必要なのではないでしょうか」

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──難解なサッカーを論理的に理解する上では、戦術をしっかり「言語化」することも大事になると思います。Leoさんは動画内で、相手のパスコースを消しながらプレスすることを「コースカットプレス」と読んでいますね。

「あの動きは本来『カバーシャドー』と呼ばれているんですよ。プレスしながら後ろの選手へのコースを切って影を作るからカバーシャドー。でも、サッカーでは空いたポジションを埋めることを『カバー』と呼んだり、『シャドーストライカー』という役割もあったりするのでややこしいじゃないですか。『要するにパスコースを切りながらプレスするんでしょ?』ということで、『コースカットプレス』と命名しました。最近だと、MFが2枚のCBの位置に下りてきて3バックを形成する『ダウンスリー』なんかも、覚えやすい用語ですね」

──古くは中田英寿選手の「キラーパス」なんて言葉もありましたが、戦術をポップに言語化することは、サポーターの戦術理解度を高めるポイントかもしれません。

「スペインだとドリブルの種類によって呼び方も変わるんですよ。ただ、スペイン語の用語をそのまま覚えるのは苦労するので、自分で試合のレポートを書くときには独自の呼び方をしています。敵陣を切り裂くドリブルは『スラッシュ』、ボールを前に運ぶドリブルは『ドライブ』、タメを作るドリブルは『キープ』といった要領ですね。日本だとひと括りにされがちですが、どれもまったく別の技術じゃないですか」

──それぞれのテクニックを得意とする選手もいそうです。

「スラッシュならメッシやアザール。ドライブならフレンキー・デ・ヨングか、切り裂くときもあるけれど中島翔哉。キープならリケルメや全盛期の本田圭佑ですね。イニエスタのすごいところは、これをすべて使い分けられること。日本でも単にドリブラーと括るのではなく、『このタイプのドリブラー』と言えるように、言語化を進めていくことが大切です」

──これから日本サッカーに言語化を根づかせていくには、何が必要になるのでしょうか。

「僕は『地球理論』って名づけているんですが、例えば『今から北海道に行こう!』ってなったら、普通は北に向かうじゃないですか。でも、南に向かったとしても、地球の裏側を一周してきたら北海道に辿り着くわけですよ。スポーツの世界では時折、この『南に向かって北海道に辿り着いた』という結果を、成功体験として人に教えている例があります。だから練習で水を飲ませないような事件も起こってしまうわけです。

これは大げさな比喩ですが、大事なのはこうした非合理なセオリーをどれだけ捨てられるか。人生においては無駄も大事ですが、最初のプランとしては『最短距離で努力することは正しい』という認識を持ち、計画を立てるべきだと思います。その想定した最短距離に無駄が多い場合は多々あるので、そこで気づいた無駄を合理的なものにする修正を繰り返し、向上していく。その意味で、合理性を求める起業家の時代は、サッカー界の追い風になるかもしれませんね」

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【プロフィール】
Leo the football
YouTuber、HipHopアーティスト。サッカーの試合やニュースを分析し、動画として投稿する自称「蹴球思想家」。J SPORTS「Foot!」でプレゼンテーターも務める。著書に三栄書房「Leo the footballのしゃべくりサッカー部」。

YouTube:
https://www.youtube.com/channel/UCmsfo6_GmedEhParaNa3r9A
Twitter:
https://twitter.com/SoccerRapperLeo
MV:
https://www.youtube.com/playlist?list=PL1cDOuIDsIUJ8bMLI5PPhHSQ1XT5sovKj
「Leo the footballのしゃべくりサッカー部」:
https://www.amazon.co.jp/dp/4779638402/ref=cm_sw_r_cp_api_i_gNeuCbY7KYD2X

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